NEUROFIT / EXERCISE

有酸素運動と筋力トレーニングをどう組み合わせるか

有酸素運動と筋力トレーニングの役割、実施する順番、継続しやすい組み合わせ方を科学的知見から解説します。

「健康のために運動しよう」と考えたとき、ランニングやエアロバイクのような有酸素運動と、スクワットやマシントレーニングのような筋力トレーニングのどちらを行えばよいのでしょうか。

結論からいえば、どちらか一方を選ぶ必要はありません。

有酸素運動と筋力トレーニングにはそれぞれ異なる役割があり、両方を組み合わせることで、心肺機能と筋力という異なる側面から身体の基礎能力を高めることができます。

WHOも成人に対して、週150〜300分の中強度有酸素活動、またはそれに相当する運動に加えて、主要な筋群を使う筋力トレーニングを週2日以上行うことを推奨しています。

有酸素運動が担うもの

ウォーキング、ジョギング、サイクリング、エアロバイクなどの有酸素運動では、一定時間にわたって心拍数を上昇させ、心肺・循環器系へ刺激を与えます。

継続的な有酸素運動によって心肺体力が向上することはよく知られていますが、近年は身体だけでなく認知機能との関連についても研究が進められています。

特に中高年を対象とした研究では、有酸素運動が実行機能の改善と関連することが報告されています。

私自身も以前、大学院への研究計画として、

「循環器能力の向上が、認知課題遂行時の前頭前野の活動とどのように関係するか」

というテーマを考えていました。

当時の研究計画では、最大酸素摂取量を循環器能力の指標として、運動前後の認知課題遂行時における前頭前野背外側部の脳血流変化をNIRSで測定することを想定していました。

ただし、「心肺機能が上がれば、そのまま脳血流が上がり、認知機能が改善する」という単純な因果関係が証明されているわけではありません。

運動と認知機能の関係には、神経活動、神経栄養因子、睡眠、気分、代謝、循環など、複数の要因が関与すると考える必要があります。

筋力トレーニングが担うもの

一方、筋力トレーニングでは、筋力・筋量・筋持久力などを高めることを目指します。

筋力が高まれば、階段を上る、荷物を運ぶ、歩き続けるといった日常動作を、より低い相対的負荷で行えるようになります。

これは私が研究計画を作成した際に参考にした心臓リハビリテーションの考え方とも共通しています。

身体活動そのものを楽にするためには、心肺機能だけを見るのではなく、「その活動を実際に行う筋肉の能力」も重要だからです。

また、筋力トレーニングについても認知機能への影響が研究されており、メタ解析では実行機能などへのプラスの効果が報告されています。ただし研究間のばらつきも大きく、特にワーキングメモリなど、すべての認知領域で一貫した効果が確認されているわけではありません。

なぜ「両方」を行うのか

有酸素運動と筋力トレーニングを同じ期間に行う方法は、コンカレントトレーニング(Concurrent Training)と呼ばれます。

考え方は非常にシンプルです。

筋力トレーニングで身体活動を支える筋力を作る。

そして、

有酸素運動によって心肺・循環器系へ継続的に刺激を入れる。

この2つを同時に育てます。

複数のメタ解析をまとめたレビューでも、筋力トレーニングと有酸素トレーニングを組み合わせた場合、筋力トレーニング単独と比較して筋力や筋肥大が大きく損なわれるとは限らず、同時に有酸素能力の向上も得られることが示されています。

つまり、「脳のためには有酸素だけ」「身体を鍛えるなら筋トレだけ」と分けるよりも、健康づくりという目的では両者を組み合わせて考える方が自然です。

筋トレと有酸素運動、どちらを先にする?

両方を同じ日に行う場合、次に出てくる疑問が順番です。

有酸素運動 → 筋トレ

なのか、

筋トレ → 有酸素運動

なのか。

最大酸素摂取量などの有酸素能力については、現在の研究では順番による大きな差は確認されていません。

一方、下肢筋力については、筋力トレーニングを先に行った方が有利になる可能性があります。

そのためKAGARI-BIでは、筋力トレーニング → 有酸素運動を基本形として考えます。

筋力トレーニングを疲労の少ない状態で実施し、その後に有酸素運動を行う、というシンプルな考え方です。

KAGARI-BIで考える基本形

運動を複雑にしすぎると、続かなくなります。

そのためKAGARI-BIでは、まず次のような構造を基本形として考えます。

筋力トレーニング3種目

↓

有酸素運動20〜30分

筋力トレーニングは例えば、

  • スクワットやレッグプレスなどの「脚」
  • チェストプレスや腕立て伏せなどの「押す動作」
  • ラットプルダウンやローイングなどの「引く動作」

という大きな運動パターンから組み立てます。

その後、

  • ウォーキング
  • エアロバイク
  • ジョギング

などの有酸素運動を行います。

KAGARI-BI METHODでは、これを生活状況や体力に合わせながら週3〜4回程度行うことを一つの基本モデルとして考えています。

これはWHOなどの公的ガイドラインそのものではなく、筋力と心肺機能の両方へ継続的に刺激を入れやすくするためのKAGARI-BI独自の基本設計です。

最初からすべてを行う必要はありません。

運動習慣がない場合には、短いウォーキングや少数の筋力トレーニングから始め、少しずつ量を増やす方法でも十分です。

目指すのは、一時的に追い込むことではない

トレーニングという言葉から、「限界まで追い込まなければいけない」と考えてしまうことがあります。

しかしKAGARI-BIが目指しているのは、一回の運動で身体を追い込むことではありません。

筋力を高める。

心肺機能を高める。

身体活動を続けやすくする。

こうした変化を少しずつ積み重ね、日常生活そのものを、より少ない負担で行える身体をつくること。

その身体的な余裕が、活動、睡眠、気分、そして日々の認知活動を支える基盤になると私たちは考えています。

有酸素運動と筋力トレーニングは、どちらかを選ぶものではありません。

「動き続けられる身体」と「動くことを支えられる身体」を、一緒につくっていく。

それが、KAGARI-BIにおける運動設計の基本です。

※持病がある方、運動中の胸痛・息切れ・めまいなどがある方、治療中の方は、運動強度を上げる前に医師や医療専門職へご相談ください。

参考文献・参考情報

  1. WHO physical activity guidance
  2. 有酸素運動と実行機能に関するメタ解析
  3. 筋力トレーニングと認知機能に関するメタ解析
  4. コンカレントトレーニングに関するシステマティックレビュー/メタ解析
  5. 運動順序とVO₂max・筋力に関するメタ解析
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